代表あいさつ

 これまでの彩星の会のあゆみに根ざす、新たな「いろどり」を

 彩星の会代表の、大野裕子(おおのひろこ)です。昭和48年生まれ50歳です。私が28歳の時、当時54歳の母がアルツハイマーと診断されました。つまり私は、彩星の会が発足した頃、若年性認知症家族となった当事者の子ども世代です。同時に今、若年性認知症当事者世代であり、自分の子どもが、若年性認知症の親を持つ可能性がある年齢でもあります。そんな自分ならば、彩星の会の「これから」に、何かお役に立てるのではないかという気持ちで、代表を務めています。

 父による6年半の在宅介護を経て、特養に入所した2か月後、母は旅立ちました。母が残した家計簿には、まだ診断を受けていない頃、自分の変化にとまどい、様々におもい悩む言葉がつづられていました。文字の乱れが徐々に進み、ある日を境に、記述はぱったり途絶えます。その時の母の気持ちはどれほどだったのか。病を疑いながらも、それに目を背けていた自分、遠距離家族介護者の限界、父へのおもい。様々な葛藤を抱えた日々でした。

 母のことを通じて、家族介護者の負担感を、どうすれば理解し、できればそれを軽減することができるか、という問題意識を持ち、社会人大学院で学ぶことにしたことをきっかけに彩星の会に出会って以来10年参加してきました。今と比べ、若年性認知症に関する情報も、それを得る手段も各段に少なく、社会における認知度も大変低かった頃、介護に直面する中で活動をスタートし、長年、情報提供や家族交流の場を作り続けてきた、顧問の先生方、そして家族会員、賛助会員の皆さまだからこそ、今の定例会や二次会が、ご本人やご家族の気持ちを丸ごと受け止める、とてもあたたかくて、居心地のよいものになっているのだろう、とおもいます。

 若年性認知症を取り巻く状況は、20年前と大きく変わりました。インターネットやSNSの普及により情報の取得が容易になり、相談窓口や居場所も増え、ご本人やご家族がアクセスしやすくなっています。また、自ら発信できる当事者が活発に活動するようになり、若年性認知症がメディアに取りあげられることも増えました。昨年、治療薬も承認され、家族会のあり方が今、節目を迎えているように感じています。社会の変化とともに、介護家族の生活スタイルも、年齢も多様化している中、会員の皆さまが、これまで積み重ねてきた地道な活動と、育んできた人と人とのつながりに感謝しながら、これからも続く彩星の会の歩みに、新たな「いろどり」を加えられるよう、会員の皆さまとともに進んでいきたいとおもっています。どうぞよろしくお願いいたします。

2024年 3月
彩星(ほし)の会  代表 大野 裕子